施工時の設計者とのやりとり例

 施工時にはいろいろの問題で設計者とのやりとりがなされます。ここでは現場でのやりとり例を集めました。
  
当初設計で吹付枠+補強鉄筋(枠内植生基材吹付)を予定していたが切取後小崩壊が発生した
施工者 崩れそうなので切取後すぐにモルタルの仮吹をしたいのですが
発注者 モルタルで仮吹してその上に吹付枠を設置することとなっても吹付枠自体に問題はありませんか?
設計者 吹付枠自体には問題ありません。
発注者 地山ががさがさながらも土砂でモルタルを吹くと、短期的には良いかもしれませんが、長い目で見た場合、 モルタルと地山に空洞ができ、融結凍解等でモルタルが割れたりして吹付枠にも悪い影響がでるのでは?と思いますがいかがでしょうか?
設計者 モルタルの仮吹きは地山の変状が出たときにすぐにクラックが入ることから作業員の安全のためには有効な手立てです。
強度的にはラスを入れないため、ほとんどありません。例えば1mの崩壊には対応できません。ただ地表面からの雨水の浸透を防ぐ、長期仮設の場合は風化を押さえるなどの効果がありますが、当地区の場合これらの効果は薄く、設置の目的は作業員の安全と考えた方が良いと思います。
一方仮吹きのマイナスポイントは、地下水を止めてしまうことです。仮吹きの背後に地下水が貯留された場合、上記の1m規模ではなく、崩壊規模が大きくなることがあります。
したがって仮吹きするのであれば、水抜きパイプを通常の倍くらい入れること、そこには吸い出し防止材を付けること、などが必要かと思います。
発注者 モルタルで仮吹するのであれば、吹付枠設置箇所だけでも撤去したほうが良いのでしょうか?
設計者 仮吹きを撤去するのは大変ですし工程的にも無駄な作業になってしまいます。
そのくらいならラスを入れ永久構造物としてのモルタル吹付としたらどうでしょうか。
水抜きを密に入れることにより、空洞は低減できます。またラスを入れることによってモルタル割れも防ぐ方向になると思います。
施工者 この場合、モルタル吹付は、”枠内”ではなく、全面の施工にはなります。厚さ10cmとしても全体に10cm鉄筋が手前にシフトしますが、そのために定着には余裕をとってあるので許容はできます。

 

当初設計では吹付枠(枠内植生基材吹付)を予定していたが切取後小崩壊が発生した
施工者 地山補強土工を付加したいのですが
発注者 現場を見るとその方が良いと思いますが、崩壊規模を設定して計算根拠を付けてください
設計者 付近に大規模な崩壊はないですし、2mくらいの規模の表層崩壊レベルの対策が良いと思います
発注者 崩壊深2mの根拠はないですか?
設計者 現地での根拠はないですが、「土砂災害防止に関する基礎調査の手引き」によれば、全国で発生したがけ崩れ災害データのうち、91%の崩壊地で崩壊深は2m以下であったことがわかっています。
国総研の「がけ崩れによる家屋被災範囲の設定手法に関する研究」でもこれを受け2.0mで検討しています。

 

当初想定よりも地質が極めて軟質だった
施工者 削孔径をφ135mmに太くしたいのですが
発注者 地山補強土で、削孔径φ115以上は聞いたことがないのですが事例はありますか?
設計者 斜面対策としては事例は少ないと思います。
が理論的には考えられ、軟弱ではルートパイルやラディッシュアンカーなどがあります。
当地区の場合計算上、φ135mm、6段は必要になりますので、ルートパイルの部類となり、SPフィックスパイルなどがこれに当たります。
発注者 他に問題点はないですか?
設計者 φ135mmの場合、問題点として、センタライザーの既製品がないことがあげられます。
施工者 その問題に対してはSPフィックスパイルなどでは対応されています。

 

当初設計の鉄筋位置(1.5mピッチ)が既設の暗渠管にあたる
施工者 この列を0.3mずらしたいのですが
発注者 隣との間隔が1.2mと1.8mになりますが安定上問題があるのではないですか
設計者 設計計算上は平均ピッチの鉄筋が何段入るかの計算をするだけですので、1本の鉄筋が数10cmどちらに寄ったとしても安定上問題ないはずです。(スパンの変化によるのり枠の構造計算はチェックする必要はあると思いますが)
発注者 数10cmというところはややあいまいで判断しにくいですね
設計者 安定上、今のような場合は設計上守っていただきたいのは全体本数とスパン長(1.0m〜1.8m−枠の構造計算から)です