地山補強土工法の維持管理

地山補強土工法の維持管理は通常パトロール

 地山補強土工法は2000年頃から施工がよくされるようになった工法であり、歴史も浅く、またアンカー工に対する日本アンカー協会のような、サポートをしてくれる団体などもない工法です。設計の指針についても、東日本・中日本・西日本高速道路(株)、日本鉄道建設公団、地盤工学会で要領、マニュアルなどを出しているものの、官公庁にはありません。

 したがって維持管理についての基準類はありません。構造などが近い構造物として、補強土壁工やアンカー工があります。

 まず補強土壁工ですが、H24改定の道路土工では擁壁工指針の中で、補強土壁工は擁壁工として維持管理、点検、補修することとされました。またアンカー工は2008年7月には「グラウンドアンカー維持管理マニュアル」が発刊されました。これらにより何れの構造物とも維持管理の必要性が認知されていますが、地山補強土工はこれらの構造物よりははるかに簡易な構造であり、また維持管理の不足によって壊れた事例もなく、同等レベルの維持/管理までは必要ないと考えられています。

 現状では切り土のり面、モルタル吹付工と同様に、通常パトロールで維持管理が可能な構造物であると見なされています。

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地山補強土工法とアンカー工の維持管理上の違い


 同じのり面抑止工法で、アンカー工と地山補強土工法はよく比較されます。従来この比較は当初の建設費(イニシャルコスト)だけで比較されていました。

 一方で維持管理の重要性が叫ばれてきた昨今、2008年7月には「グラウンドアンカー維持管理マニュアル」が発刊され維持管理の重要性とコストが必要だと認知されてきました。

 アンカー工は安定機構上、プレストレスが必需の構造物であり、常にプレストレスの管理・把握が必要なのです。

 一方で地山補強土工法は、アンカーのようなプレストレスはないため、特別な維持管理を必要とせず、定常パトロールなどの管理で十分なのです。

 

維持管理費を考慮した工法比較

 維持管理費は、イニシャルコストと比べてどのくらいの費用なのでしょうか。

 今回、「グラウンドアンカー維持管理マニュアル」に従い積算してみました。同マニュアルによれば最大では膨大な維持管理が必要になるものの、ここでは確実に必要である、リフトオフと再緊張の作業のみを計上してみました。

 

 工法比較については以下を参照してください。

アンカー工との比較例