よくある設計上の誤りと問題点

基本的な適用に関する誤り
地盤定数と安定計算の誤り
安全率でよく議論される問題
補強材の配置計画の際の問題
補強材の許容補強材力の誤り

 

基本的な適用に関する誤り
  以下はよくある安定計算の際の誤りです。

ある道路改良工事で、1:1.0勾配の切土のり面の検討をしている。地質調査の結果から地山はやや軟質であり、1:1.0勾配の切土ではやや不安であるため、「経験的手法」で長さ3.0mの鉄筋を1本/2m2配置で補強を計画した。

本来これは間違いである。
一般的に用いられる設計手順としては、
@崩壊対策(軽微な崩壊−表層2m程度以浅の斜面の劣化状態が将来斜面崩壊起こさせる恐れがある場合)に用いる場合とA急勾配掘削に用いる場合 に分かれており、「経験的手法」はそのうちの@崩壊対策に用いる場合 にのみ示されている手法である。今回の場合は急勾配掘削に用いる場合と判断される。急勾配掘削ではきちんと安定度を評価し計画する必要がある。
 

 

地盤定数と安定計算の誤り
以下はよくある安定計算の際の誤りです。

ある道路改良工事で、切土のり面の検討をしている。地質調査の結果から地山の安定勾配は1:1.0であると判断されたが、用地上の問題から切土勾配を1:0.8にたてなければならずこの場合の補強を「切土補強土工法」で行う。

安定度の考え方として、1:1.0が安定勾配であることから、計画地形に対して1:1.0より上の土塊をFs=1.00と仮定し、土質定数を逆算し、計画安全率を満足する対策を計画した。

事後になって「安定度の考え方がおかしい」との指摘を受け全面的にやり直しとなった。ではどこが間違っていたのだろうか。
間違っていたのは上記計画地形に対してFs=1.00と仮定したことである。逆算法における仮定はその安定度を確認できる場合に限られる。現地形をFs=1.00と仮定する場合は問題がないが、計画地形は今後新たに切り取る計画地形であり、Fs≧1.00である保証はどこにもない。上記間違った考えによれば、切土勾配が1:0.8であっても1:0.5であっても、極端に言えば直壁であってもFs=1.00と考えているのである。
 

この場合は安定勾配の状態をFs=1.20として逆算することがベストと考えられる。

 

安全率でよく議論される問題

ある市町村道の道路改良工事で、切土のり面を造成する際の補強を「切土補強土工法」で計画している。設計は「切土補強土工法設計・施工要領」を参考文献として行っており、その中で協議なしで補強斜面の計画安全率を以下を参考に1.20に設定し計画を進めた。

表4.4.1 補強斜面の計画安全率
項目 計画安全率
永久(長期) Fsp≧1.20
仮設(短期) Fsp≧1.05,1.10

これは本来協議事項である。同指針では上表も高速道路本線の永久のり面ということを基本としており、それ以外の場合はそれぞれの計画安全率によった方がよいと思われる。通常、市町村道でのり面崩壊対策工事に用いられる出来上がりのり面の計画安全率は、本来行政サイドの管理事項であり、打ち合わせと確認が必須である。

全国防災協会が行っている災害復旧技術講習では以下の値が参考とされている。

 

重要な道路、河川、人家等に重大な影響を与える箇所 Fsp≧1.20
主要地方道、一般県道 Fsp≧1.15
市町村道 Fsp≧1.12
応急工事 Fsp≧1.05

協議などを行った場合、本表に合わせた計画安全率となっている場合が多いようである。

 

補強材の配置計画の際の問題
以下はよくある補強材配置の際の問題です。

【B現場】
道路改良工事で、「切土補強土工法」で切土のり面の補強を計画している。補強材の配置として、2.0m2に1本の割合で、切土のり面の全区間に対して、全て同じ長さの補強鉄筋工を計画した。


上記配置基準はそれぞれが「切土補強土工法設計・施工指針」に記載してある通りとしていた。
しかし事後になって「施工後の安定度がFs=1.75あることが判明し、不経済ではないか」との指摘を受けた。何が問題だったのであろうか。

計画では旧日本道路公団の「切土補強土工法設計・施工要領」に完全に準拠した形で計画した。しかし対策工が負担すべき増加安全率は、1.20−1.07=0.13とわずか13%であるのにに対して、前述の設計条件で計画すると1.75−1.07=0.68と68%も上昇させる対策であったのである。
このように鉄筋による補強は補強面の勾配や上昇させるべき安全率の大きさによってどのようなコンセプトで配置するかが現場毎に異なる。要は補強した後、そこには大きなすべりも、小さなすべりも発生させない配置計画であり、かつ経済的に配置することが適合した計画 が必要といえる。
 

 

補強材の許容補強材力の誤り
以下はよくある許容補強材力計算の際の誤りです。

ある現場で切土補強土工法を計画している。計画断面は以下のようであり、T1paとT2paとTsaのうち最も弱い抵抗値で設計した。



 この設計では、移動土塊が極めて薄いため、T1paが極端に小さくなる。このため上記の設計計算ではこの補強鉄筋に抑止力はほとんどないことになってしまう。
 「切土補強土工法設計・施工要領」では、「吹付枠工相当以上ののり面工を用いた場合にはT1paの検討を無視しても良い(p.38)」としている。この場合はT2paとTsaのうち最も弱い抵抗値で設計するのが 良いと思われる。